次世代ニュートリノ科学・マルチメッセンジャー天文学連携研究機構(NNSO)が10月1日に発足したのを記念する初めての研究会「マルチメッセンジャー天文学の展開」が11月1日から2日間、東京大学柏キャンパスで開かれました。
同組織の前身である次世代ニュートリノ科学連携研究機構は2017年10月、東京大学の宇宙線研究所、カブリ数物連携宇宙研究機構および大学院理学系研究科が協力して発足。2019年2月には地震研究所も加わり、4部局が連携して研究活動を推進してきました。当初の目的は、ハイパーカミオカンデの完成を見越し、ニュートリノ研究や実験技術開発を通し、本研究分野の未来を開拓するというもので、「理論と実験・観測が強く連携した研究体制の構築」と「世界の中心となるニュートリノ研究拠点の創設」を目指していました。一方、4部局は、高エネルギー突発天体事象を多様な観測手段を連携させて観測的・理論的に研究するマルチメッセンジャー天文学においても連携し研究の視野を拡大できることを認識し、2023年度の組織整備概算要求にあたり、機構名を「次世代ニュートリノ科学・マルチメッセンジャー天文学連携研究機構」に変更することを提案。幸い、組織整備の概算要求が認められ、本年10月1日、従来の組織を改組・拡充して新たな体制のもとでの研究をスタートさせました。
東京大学柏図書館メディアホールで行われた発足記念の研究会には、東京大学の宇宙線研究所、カブリ数物連携宇宙研究機構、地震研究所、大学院理学系研究科に加え、千葉大学、京都大学、東北大学、早稲田大学、大阪大学、国立天文台、岐阜大学、東京都市大学などに所属し、マルチメッセンジャー天文学に関心のある研究者108人が参加しました。
研究会の冒頭、NNSO機構長の梶田隆章教授が登壇。梶田機構長はまず、連星中性子星合体からの重力波とX線観測、それに続くガンマ線、光学望遠鏡などのフォローアップ観測で、鉄より重い重元素合成の解明への一歩が示されたことや、南極のIceCube実験の高エネルギーニュートリノ観測の信号をトリガーとして高エネルギーガンマ線が観測され、宇宙における粒子加速に新たな知見が得られるなど、マルチメッセンジャー天文学が本格的に動き出した現状に触れました。そのうえで、「これから本格化するマルチメッセンジャー天文学の時代に、この分野で世界の科学をリードするためには、東京大学が運営または、プロジェクトに深く関わる、ニュートリノ、重力波、高エネルギー宇宙線、ガンマ線、X線、光学望遠鏡など一流の装置から観測データを出すだけでは不十分です。各プロジェクトの関係者のみならず、理論分野の研究者も積極的に参加し、各プロジェクトから得られるデータを有機的に結合して新たな知見を生み出していくとが重要です。このため、次世代ニュートリノ科学連携研究機構を改組・拡充した組織を作ることを提案してきましたが、このほど東京大学本部に認めて頂き、10月1日に発足させることができました。その発足を記念して行われる本研究会では、マルチメッセンジャー天文学をいかに推進していくべきか、積極的な議論を期待しています」と挨拶しました。
続いて、浅野勝晃教授が「マルチメッセンジャー天文学 : Overview」と題し、6つあるセッションごとに講演者が述べる内容について概観。この後、Zoomを繋いだリモート講演者も含め2日間で計31人が発表し、質疑応答が行われました。